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連載 空間とインテリア
#1 愛嬌のあるものたち


ダイニングから望む海

海が⾒える場所を探していた。 坂を上った先にあるこの⼟地は、街の向こうに海がのぞき、裏⼿の公園では⼤きな⽊々が⾵に揺れていた。葉擦れの⾳と⿃の声が混じり合うその静けさに、「ここなら理想の建物が実現する」と確信したという。⾒晴らしのよさと公園沿いという落ち着いた環境に惹かれ、この場所に家を建てることを決めた。朝は公園側の窓から差し込む⽊漏れ⽇の下でコーヒーを飲む。天井を低く抑えたLDK。⾃然と窓の外へと視線が導かれ、⾼台でありながら落ち着きのある空間をつくり出す。傾斜地という課題や、⾼台ゆえの⾼さの感覚に迷う場⾯もあったが、最後の決め⼿は「はじめに良いと感じた感覚」だった。海と公園の⽊々をのぞむこの家と、部屋に置かれた⾃由な表情を持つ家具や⼩物。どちらも、施主の⼦供時代から続く感覚の延⻑線上にある。

朝のリビングの木漏れ日

LDKから公園側をのぞむ

部屋にはシャルロット・ぺリアンのスツールなどの名作家具から、名前のないガラス細⼯まで、直感で選ばれたものが並ぶ。どの品にも物語があり、⼿に取るほどに愛らしさが深まっていくものだ。新築当初に迎え⼊れたアンティークのダイニングテーブルは、⼆⼈暮らしにちょうどいいサイズ感。やや低めの⾼さが、ラウンジチェアと⾃然に馴染むという。いつも座っているのはイームズのチェアと、ハンス・J・ウェグナーが⼿がけたCH22。特別に構えることなく、暮らしの延⻑として使い続けている。特にお気に⼊りのインテリアは⼤橋保隆さんのスタンドライト。⼤橋さんは⼀枚の平らな銅板を⾦鎚で打ち起こし形作る鎚起銅器の職⼈。何万回も打たれたであろうランプシェードは銅板の冷たさと職⼈の⼿の温もりを感じる独特な雰囲気だ。そうした家具や道具に共通しているのは、暮らしの中で静かに存在感を放ちながら、どれもが主張しすぎることなく、触れたとき、灯ったときに、感覚に静かに訴えかけてくる。 「この家に暮らし始めてからは、⾃然と同じリズムで暮らしています」。朝の光や⽉のあかり、部屋の間接光、猫のにおい、⿃のさえずり—そんな⼩さな気配に意識が向くようになった。⾃分の感覚を信じて建てた家は、⾃然と響き合いながら暮らすための静かな器になっている。

リビングのダイニングテーブル/pejite

ガラス細工の鳥


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