小さな建築

今回の建物は「住宅」という括りから一旦外に出て「離れ」という建物になるであろう。
「離れ」とは主たる建物である母屋(おもや)に対し従たる建物として母屋から離れた場所に存在する建物である。構成もメインルームとサブルーム、それにトイレとシャワースペースという一般の住宅にあるシステムキッチンやユニットバス、生活する上で付随してくるものを一旦削ぎ落としたシンプルな建物である。朝、東の空から煌々と降り注ぐ太陽の光。素朴なラワン合板の内装にすることで、壁紙とは違う陰影を、目が覚めると影を自然と目で追うようになる。一方で床をコンクリート打ちっぱなしにすることで、足に伝わるコンクリートの温度。夏場の気持ちよさとは別に冬の寒々しさ。
何気ない日常の一コマで見えてくるものが変わってくる。

今回クライアントは「ピアノ教室」という用途を提示してきた。メインルームにはグランドピアノが2台。
毎日夕方になると近所の子供たちが集まり、ピアノの練習が始まるという。ピアノが空くのを待つ子供たちも、メインルームから外につながる玄関アプローチ前を通ってお庭でのびのび遊んでいるという。小さな建築に、あえて小さな空間を設けサブルームとし天井を低く抑え、縦の変化を持たせることにより心の落ち着く空間となっている。置かれたソファーに座りながら、窓を開け風を感じ隣の部屋から聞こえてくるピアノの音色を聞いているといつの間にか眠ってしまいそうなほどだ。

離れの利は多様性を秘めている。住宅との付属性により離れの利が生まれ、今回のようなピアノ教室は浜辺や山などでヴィラのような短期宿泊施設としての可変性も秘めているだろう。普通の生活を削ぎ落とし、建物を身に纏うことで見えてくる自然との一体感。小さな建築は色々なことを考えさせてくれる。

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